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side.Tamotsu 「ッ…………」 恐る恐る目を開け、 仰ぎ見た上原君の表情はもう… 何も、映してなくて。 「そう、か…じゃあ─────」 勝手にしろ…と。 先程の怒りも嘘みたく淡々と言い残し、 「…ぁ………」 静かに、行ってしまった。 「…ぁ…う……ッ…」 異様なほど静まり返った室内に取り残され、 サ───…と引いていく血の気。 反して沸き上がる、 後悔の念。 「保サン…」 遠慮がちに掛けられる声にも微動だに出来ず、 僕はガクンとその場に崩れ落ちる。 「保、サン…」 「どう、しよ…」 なんで、あんなコト言っちゃったんだろ? 怒らせたかったわけじゃない、ちゃんと話して誤解をといて。 仲直りしようって…なのに、 「ふッ…ぇ……」 ギリギリで留めてたものが、途端に堰を切って溢れ出す。 それは熱い雫となって、止め処なくボロボロと。 「どう、しよッ…上原く、怒っ…ぼく、ぼくッ…」 「保サン…」 やり場のない感情を制御出来ず、 子どもみたく泣き叫ぶ僕に。 陸人君は困ったよう悲痛な表情を湛えながらも、 優しく背中を支えてくれる。 けど、もう…ダメ、みたいだ…… 「き、らわれ、ちゃっ…た…ぼくッ……ぅわああああ…!!」 あれは本心じゃなかったんだ。 ただキミが好きなだけ…好き過ぎて、不安で。 どうしていいか判らなかっただけなんだ。 自分に自信がないから、 いつか失ってしまうのが怖くて。 焦って間違って、結局は自分で、 壊してしまった…。 「保サン……」 陸人君が優しく抱き締めてくれるのに、 僕の頭の中には上原君しかいなくて。 こんな風に抱き締めてくれる事も無いのかなって、 そんな最低な事を考えてたら… 涙は更に胸の奥底から。痛みを伴って溢れ続けた。

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