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side.Tamotsu
気付いたら僕は、学校の屋上に来ていた…
あの後の記憶は殆ど無くって。
どうにか覚えてたのは、
陸人君がずっと傍にいてくれてたコト。
彼がいつ帰ったのかも曖昧に夜が更け、陽は登り。
ポッカリと開いてしまった日曜日の記憶。
そしてまた次の日の朝が来てしまい。
陽が登り切らぬうちに僕は、無意識に学ランを纏って。鞄も何も持たず、フラフラとこの場所まで来てしまったみたいだ…。
学校で最も危険な人物が縄張りにしてるのだと、専らの噂で。
わざわざ自分から訪れる一般生徒は、まずいない……彼の庭。
(初めて、だったんだ…)
覚えてるかな?
僕がここで初めて話し掛けた日の事を。
あの時の僕はキミの目に、どんな風に映ってたんだろう。
ごくフツーに話し掛けたつもりだけどね。
ホントはスッゴく緊張して、心臓なんてバクバク破裂しそうなくらい鳴ってたんだよ?
それはもう、死んじゃうんじゃないかってくらいさ…
初めて話して、まさかの告白まで…しちゃったんだよね、僕…。
あれはかなりズルイとは思ったけど。
あの時勇気を出せてなかったら。
キミの隣りになんて、絶対いられなかったんだろうな。
まだまだ沢山あるんだ。
友達からの再スタートで、色んな事を話して。
キミに初めてプレゼントとか贈っちゃったのも、
この場所だったよね…。
エッチなコトはフライングで。
曖昧な関係のまま、先に家でシちゃったけど…
ちゃんと両想いになってからのを言えば、
やっぱり初めては、この場所だったから…
あの日の夕焼けは、本当に綺麗で。
今でも鮮明に覚えてるんだよ?
「…ふッ…ぅ……」
渇れる事を知らない哀しみは、止めどなく溢れ出て。主のいない静かな屋上で、こっそりと僕は嗚咽を漏らす。
朝からずっとこの調子。
ここに来た時は、まだ誰も登校してなかったけれど。
陽が昇り、何度目かチャイムの音がして。
ザワザワし始めた校内も、さっき鳴ったチャイムでまた、しんと静まり返ってしまった。
端から授業を受けようなんて頭になかった。
鞄だってみんな置いてきちゃったし。
ただ朝が来たら…ふとこの場所が思い浮かんできて。そうしたらもう、ここに来ちゃってたもんだから…
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