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side.Tamotsu 「あらあら、保…どうしたの?」 気付いたら、昼過ぎまで屋上にいた僕は。 昼休憩が終わった辺りで、こっそりとその場を後にして。 こんな時間に学ラン来た高校生が、醜く泣き腫らした顔を晒しながらフラフラ出歩くわけにもいかなかったので…。 結局は行く宛すら見当たらず、 こうして自宅へと戻って来てしまったんだけど…。 無意識に開けたドアには、鍵が掛かっていなくて。 ぼーっとしてたから閉め忘れてたんだろなって、そう思ってたら…まさかのお母さんが出迎えてくれたという。 そっか、お母さん仕事休みだったんだ…。 「とりあえず…座って?」 息子が無断で学校をサボった事には、一切触れず。お母さんは立ち尽くしたままの僕の手を、優しく導いてくれる。 そのままキッチンの椅子に座らされて。 程なくして、お茶の入った湯呑みが差し出された。 湯気の立つそれを、僕はぼんやりと見つめる。 「最近、様子がおかしいとは思ってたんだけど…」 何かあったの?…と。母はやんわりと尋ねてくる。 こんな時、決して無理強いはしない。 それがうちのお母さんのやり方だった。 「…………」 簡単に応えられるはずもなく、僕は黙ったまんま母を見つめる。 ずっと泣いてた事なんて、僕の顔を見れば一目瞭然だろう。なんせ今の僕は鏡で見なくたって判るくらい、悲惨な状態だったろうから…。 そんな消沈しきった僕に対し、お母さんはすぐ隣に腰掛けると。僕の手をふんわりと包み込むよう握ってきた。 「保はすぐひとりで無理しちゃうから…。ごめんね、色々大変な時に、家の事任せっきりにしちゃって…」 普通に学校へは行かせてあげたい。 勉強もいいけど、男の子は少しヤンチャなくらいが丁度良いんだから───… 友達と遊んだり、恋だなんだ経験して。 色んな事にぶつかって挑んで、たまには悩んだりもして。お母さん、口癖みたく良く話してくれてた。 自由でおおらかで理解のある…僕の自慢の家族…。 「そんなっ、謝らないで…」 漸く絞り出した声は、泣き潰れ途切れ途切れで。 お母さんは悲しそうに眉を下げる。 困った時の顔は、ホント僕とそっくりだった。 「お母さん、何もしてあげられないけど。いつだって保の味方だから…」 我慢しなくていいのよって。 柔らかく頭を撫でてくれる母に。 「おかあ、さっ…!」 限界だった僕は堪え切れず。 甘んじてその優しさに、縋り付いていた。

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