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side.Akihito 全てが思い通りにならなくて。 八つ当たりするガキみてぇに暴れまくっても、 気は晴れないまんま。 身も心もボロッボロ、 ろくに寝てさえいねぇってのに。 どう足掻いても、逃げる事は許されない。 (たも、つ…) こんなドブ臭ぇ場所にアイツがいるワケもねぇのに。まるでアイツを探すみたく、フラフラ街をさ迷い続ける。 月曜になったからと言って、クソ真面目に学校なんざ通えるような気分でもなかったが…。 もしかしたら保に会えるかもしれない、今更どのツラ下げて────…って話だが。 今は本能だけでアイツを欲しちまってるみたいで。情けなくも早々身仕度して、学校へと向かってた。 とはいえ、アイツの教室を覗く勇気さえ無く。 結局は逃げるように、いつもの場所…屋上へと自然に向かってたんだが… そこで思いがけず、アイツを見つけてしまった。 湿気臭い階段を登り、錆びかけのドアに手を掛ける。その途端、誰かが啜り泣くような声が聞こえ───… オレはギクリとして、その手を止めてしまった。 こんな場所に来るヤツなんざ、そうそういねぇ。 だとしたら浮かぶのはただひとり… 俺は息を潜めるしかなく、そのまま立ち尽くした。 その泣き声は遠慮がちで。 嗚咽を堪えようと、必死になってたけど…。 耐えきれず吐き出され、次第に感情は箍を外して。より激しいものへと変わっていく。 いつから、そこで泣いてたのか… 俺が知るだけでも数時間は泣き続けていた、保。 いつまで経っても嗚咽は途切れることなく。 俺はただじっとドアに背中を預け、その場に佇む事しか出来なかった。 今すぐ扉を開け謝らなければ────… そう、思いはするものの… 『も、やだぁ……』 吐き出された保の本音に、俺は為す術を失う。 俺がコイツをこんなにも苦しませているのだと、 そう思ったら… 何も、出来なくなってしまった。

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