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side.Tamotsu
「イヤだ。」
「は?まだ解んないの?お前に拒否権なんて、」
「絶対に、別れ…ない。」
彼の台詞を遮り、断言すると。
なんとも悔しげに舌打ちするマキ君。
けど、これだけは譲れないんだ。
「だったら…すぐ別れたくなるようにしてやるよ。和博!」
呼ばれて少年らの中から1人、出てきたのは陸人君の従兄弟である少年で。彼はニヤリとしながら待機していた少年達に向け、顎で合図する。
「あッ…!」
羽交い締めにされたまま、数人の少年が僕へと集まって来て。ギラギラと獲物を追い詰めるような視線を向けられ、喉の奥がゾクリと震え出した。
「このチビ、マジで犯るんスか~?ボコるだけで充分だと思うんスけどぉ。」
にじり寄る少年の1人が僕の胸ぐらを掴み、後ろに控える和博君に向け問うも。
「バーカ、それだけじゃイミねぇんだよ。相手はあの上原なんだぜ?」
そう答えつつ、僕をチラリと見やる和博君。
「それに…アイツが相当気に入ってんだ。見た目はまあ、普通だが…。案外と上玉かもしんねーぞ?」
目が合った和博君は、なんとも下品な笑みを向け、少年らを促す。
「まあ女みてぇにヒョロいし…イケなくもねーか。ならとっとと脱がせちまおうぜ。」
「ゃ…だっ…!」
なんとなく、彼らの会話から。これから自分にされる事がなんなのかが、読めてきて。僕は抵抗しようと踏ん張るものの、ガシリと捕らえられた腕はピクリともしやしない。
それどころか、いとも容易く制服を剥ぎ取られてしまい───…
「やっべ、コイツの乳首ドピンクじゃん!無駄にヤラシい色してんなぁ~!」
「ッ…!!」
為す術なく、あっという間に上半身を晒されてしまった。羞恥と恐怖に、身体が勝手に震え出す。
「あらら~、なぁに恥じらっちゃってんの?アイツとは散々ヤりまくってるクセに…。まぁだ純情ぶるわけ?」
少年らの隙間から、マキ君の勝ち誇ったような笑いが飛ぶ。
負けじと声のする方を睨み付けるものの。
少年らが僕の身体へと手を這わせてきた為、淡い抵抗は呆気なく阻止されてしまった。
触れられた箇所からゾクリと悪寒が走り、口から小さな悲鳴がこぼれ落ちる。
(こんなのッ…ヤだ…!)
知らない男の子達から触れられるのが、こんなにも気持ち悪いものだなんて…。上原君にされるのとは別モノ、比べものにならないから。嫌悪感だけが僕を襲う。
どうにかして逃げようと抗うのだけど。
元より非力で常人の僕が、一回り以上大きくて不良な彼らに敵うはずもなく。
この状況から逃げうる方法なんて、無いに等しかった。
赤の他人である僕に、彼らは手加減など皆無。
拒もうものなら容赦なく平手打ちが飛び、拘束する腕にギチギチと爪が食い込んだ。
骨が軋むような音と、切羽詰まった心音が警笛のように頭で鳴り響く。
絶望にうちひしがれてく僕の姿を、マキ君は。
子どもみたく、なんとも楽しげに笑っていた。
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