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side.Tamotsu 「…ッ……!」 (泣くもんか…こんなことで、負けるもんか…!) 痛い怖い気持ち悪い… それでも歯を食い縛り、耐える。 ジタバタ暴れれば頬を打たれて。 ベルトも今度は呆気なく引き千切られてしまうけど。 それでも寸でのところで堪え、足掻いて。 少しでも抵抗しようと、無我夢中で踏ん張った。 (こんなこと、大したことじゃ、ない…) あの日…上原君が見せた冷たい瞳、悲しそうな表情。 喧嘩最強で、いつでもそつなくクールでいて、 とびきりカッコ良くって。 そんな彼が僕に見せた、弱々しい姿。 (上原君とケンカしたことに比べたら、こんなのッ…) まだまだ話したいことが沢山あるんだ。 もう一度キミが傍にいて、笑っていてくれるならば。 僕は… 「どうせもう終わってるクセにッ…!」 いつまで経っても負けを認めない僕に、痺れを切らしたマキ君が怒鳴る。 余りの剣幕に、僕を痛めつけていた少年達の手が、 ビクリと止まってしまった。 「そう、だね…」 誤解もあったろうけど、僕が上原君を傷付けてしまったのは、紛れもない事実。 そして彼が、僕から離れていってしまったのも… もしかしたら、もう手遅れで。 キミとの関係が戻ることは、叶わないのかもしれないね。 「ここでいくら頑張っても、ムダなのかも…」 キミの心は既に、僕のところには無くて。 修復の余地なんて万にひとつの可能性すら、残されていないのかもしれない。 それでも、僕はずっと想ってる。 何があっても、キミに向ける想いは変わらないよ… 大好き、大好き。 例えこの想いが空回りだとしても、ずっとずっと。 この先、生涯独りきりになっても。 初めて本気で好きになったキミを…想い続けると誓うから。 「だから、マキ君には絶対に負けない。」 「ッ…うるさい────…」 ダマレと叫んで、振りかざしたのはナイフ。 煌めく切っ先に、逃げたしたくなる衝動に駆られたけど。 僕は敢えて目を見開き、真っ向からソレを受け止める覚悟で──── 「ムダなんかじゃねーよ。」 廃工場の中、 ドサリと鈍い音が鳴り響き、全員が息を飲む。 反射的に、音と声がした方へと皆が振り返れば。 地面に伏した不良少年と、そして、

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