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side.Tamotsu 「…う、え……はら、く…─────」 来るはずないって、けどもしかしたらって。 本当は心の何処かで、期待していた。 だってキミはいつだって。 僕がピンチになった時、必ず助けてくれたんだから。 「保…」 僕の無惨な姿を認めて。上原君が表情を険しくさせながら、こちらへと歩を向ける。 不意討ちの状況に面食らい、取り巻きの少年達は暫く棒立ちだったが…。 我に返ると、慌てて僕らの間に(はだ)かり、壁を作った。 「お前、何しに…来たの?」 信じられないとばかりに、動揺を口にするマキ君を。上原君は目もくれず、僕だけを捉える。 「この子、陸人と浮気したんだろ?なのになんで──」 「うるせぇよ、お前。」 先程の調子で捲し立てるマキ君を、殺気丸出しで睨み付ける上原君。 マキ君も、これには蛇に睨まれた蛙状態。 反射的にビクリと肩を竦ませ、返す言葉を失った。 「今すっげぇイラついてっからよ。あんまウゼェと、」 ″ブッ殺ス──────…″ 宣告する様は、決して冗談や虚勢などではなく。 上原君のその目が、本気を物語る。 さすがのマキ君も、堪らず冷や汗を滲ませて。 周囲の少年達も本能的に危険を察しては、後退りしていた。 「…保。」 マキ君が大人しくなったところで、上原君は再び僕を見やる。 目が合えば、じっと真顔で見つめられて…。 久しぶりのそれに状況も忘れ、思わず胸を高鳴らせた。 今までにないような緊張感が、僕を包み込む。 「どし、て…ここにっ…」 僕がなんとか絞り出した疑問は、掠れて途切れ途切れになってしまったけれど。 「どうしてって、当然だろ?」 「だってもう、上原君は…僕のことなんてっ…」 キライになってしまったんじゃ────… 言い掛けた台詞を、上原君が遮る。 「んなこと、誰が言ったんだよ。」 愛しい人を前に、つい弱気になってしまった僕。 上原君は少し困ったよう、苦笑して返す。 「お前は俺のもん、なんだろ?」 だったら… 「自信持って…俺に愛されてりゃいいんだよ!」 「ッ…────!」 欲しいなら欲しいと、欲張ればいい。 お前が求める分だけ、俺がもっともっと与えてやるから。 「お前が俺のもんなら、俺もお前だけのもんだ。」 愛してるから─────…そう言い切るキミは、 とても優しい顔で笑っていたんだ。

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