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side.Tamotsu 「そんな余裕ぶりやがって…コイツが、どうなっても知らないよ!」 怯みながらも、マキ君は一歩も引かなくて。 取り巻きの少年達を盾に置き、抵抗を継続する。 そうして彼は僕の喉元にナイフを突き付け、上原君の動きを制した。 無防備になった上原君に、少年達がじわじわと迫る。 「おら…よッ!!」 「上原君!!」 和博君が先陣を切り、もて余した武器を手に上原君の背後へと躍り出る。 上原君は気配だけで、彼の動きを察知していたように見えたんだけど… 「やッ─────」 敢えて避けようとはせず。 何故かそれを、まともに受け入れてしまっていた。 堪らず悲鳴を上げる僕。 上原君は… 「たく…」 「なッ…!?」 あんな勢いで鉄パイプで殴られたら…ただでは済まないであろう一撃を。 「んなもん、効くかっての。」 上原君はさも当然とばかりに、片手だけでソレを受け止めてしまい。…と、ミシリと鈍い音をたてるその鉄パイプを、軽々と押し退けていた。 これには面食らい、和博君は驚いたよう絶句する。 「チッ…怯むんじゃない!相手はたった1人だろっ…」 圧倒的な暴力のカリスマを前に。 尻込みする少年達を、マキ君が叱咤する。 本能で上原君の力量を痛感した彼らは。 互いを見やり、出方を伺ったが… 戦況から考えれば実質20対1なわけで。 ならば勝算有りと踏んでか、一斉に攻撃を仕掛けにいった。 「ホラ、抵抗してみなよ?出来るもんなら…さあ!」 20人前後の少年達が上原君めがけ、襲い掛かるけど。 僕という枷がある以上、上原君は反撃せず。 防戦一方を強いられる。 「やだッ…も、やめて…!!」 手が出せない以上、余りにも不利なわけで。 上原君の身体は、みるみるうちに傷付いていく。 それに先程、和博君に殴られた時にでもパイプが頭を掠めてたんだろうか。金髪の間、たらりと額を伝う真っ赤な血筋が…滴り落ちているのが見えた。 「もう、やめてよッ…上原君が死んじゃう!!」 こんなのヤダ…どうして僕はいつも、キミの重荷にばかりなってしまうんだろうか。 キミが僕を守ってくれるように。 僕だってキミの為になるような、存在でありたいのに… 「…う…ッ……」 悔しい、僕に少しでも力があれば。 けれど現実は、この拘束される手すら自由に出来やしない。 叶うなら今すぐ、キミの元へ行きたいのに。 悔しくて、でも余りに無力で。ただ泣き喚くしかない自分が、あまりにも情けなくて仕方なかった。

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