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side.Tamotsu (まだ、かな…) 薄暗かった工場内から外に出ると、場違いなくらいに日差しが明るくて。 馴れない目を細め…太陽を仰いだ後、何度となく建物の入口を振り返る。 締め切った扉の向こうからは、時折打ち付けるような鈍い音や悲鳴が聞こえてきたけれど… 「アイツなら、大丈夫ッスよ。」 今すぐにでも舞い戻りたくなる衝動を、陸人君がなんてことないといった表情で引き止めるから。 仕方なく入口の横へと膝を抱えてしゃがみこみ。祈るよう目を閉じて、その時を待ち侘びた。 (そうだよね…上原君なら、きっと…) 実際に彼の実力を、この目で見たわけじゃないし。僕には喧嘩なんて無縁なことだったから。 未だ20人前後はいるであろう少年達を相手に、上原君ひとりでどうにか出来るのかなって…正直、不安でしかないけれど。 それでも上原君が信じろって言ったし。 どのみち僕では足手纏いにしかならないから… 今は彼を信じて、待つしかないんだ。 (上原君…) ぎゅっと上原君の制服を抱き締める。 素肌に羽織ったそれは、何より温かくて…。 久方ぶりの彼の匂いに。 潰れかけてた心が、じんわりと解かされる。 (うん、大丈夫だ…絶対…) 彼が与えてくれた言葉を、反芻し(いだ)く。 今までの詳しい事情とか、マキ君との事とか… それこそ聞きたかったことは沢山あったのだけれど。 上原君はこうして僕のもとへ来てくれて。 何よりも欲した言葉を、真っ先に伝えてくれたんだから… だから、きっと───── 「保。」 「ッ…─────」 大丈夫、今度は信じられるよ。

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