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side.Tamotsu
「あ、マキ君達…は?」
上原君は無事に出てきたけれど…。
マキ君や和博君達が出てくる様子は無く。
寧ろ工場の中は、嘘みたいに静まりかえってて。
聞くのがちょっと怖い気もしたけど。
さすがに気になるから、恐る恐る確認してみれば…
「ん?あ~……まあ、生きてはいるんじゃねぇか?」
「…ソデスカ……」
…こんなやり取り、前にもあった気がする。
それを懐かしむには、微妙な状況だったけども。
「色々話したい事もあっけど…今はとりあえず、場所を変えようぜ?」
「え?あ、でもガッコは…」
こんな非常時なのに、そういえば学校サボっちゃったなとか冷静に漏らす僕に。上原君は苦笑してみせる。
「バーカ、んな格好で行けるわけないだろ?」
顎で指摘され、改めて自分の姿を省みると…。
確かに、制服はボロボロの泥だらけ。半裸状態だったから、上着は上原君が貸してくれた物だし…
見えないから定かではないけど、きっと顔は痣だらけで。かなり悲惨なことになってるだろうな。
それに、今は平然としてる上原君だけど。
あれだけ殴られて喧嘩して、無事なわけがないんだし…。
きっと僕を気遣って…普通にしてくれてるんだろうから。
「あっ……陸人君…!」
そこで漸く気付いて、僕らの様子をずっと目の前で傍観していた彼を振り返る。
目が合うと陸人君にも苦笑されて。
そういえば、さっきのプロポーズとかキスだとかっ…色々やらかしちゃったのを思い出した僕は。
執着心に駆られ、思わず顔を紅潮させた。
「なんだ、お前まだいたのかよ。」
「…テメェは本気で忘れてただろ。」
さっきまでとは打って変わり、素っ気なく言い放つ上原君に。陸人君もなかなか好戦的な口調で食ってかかる。
あれ…険悪だったふたりも、やっと解り合えて。
仲良くなれたんじゃあ、なかったのかな…?
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