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side.Tamotsu
「お袋さんは?」
「あ、えっと…多分夜には帰ってくるかな…。」
あれから、お互い見るも痛々しいくらい怪我だらけだったし…。たくさん話したいこともあったから。
僕の家へと場所を移し、とりあえず手当てをすることになったんだけど。
僕の部屋に入るなり、そう問い掛ける上原君は。
時計を仰いだ後…
「そうか…なら、時間はあるな。」
「あっ…」
言っていきなり僕を抱き寄せ、腕の中へと収めてきた。またもや不意打ちで与えられた接触に、僕の心臓は忙しなく高鳴る。
「ちょ…うえはら、くっ…ひゃっ…!」
「じっとしてろよ、保…」
そう言われても、上原君の手が僕の身体をあちこち触り始めて。頬や唇、あらゆる箇所へと口付け…ペロペロと舐め出したものだから、堪らない。
元々、こういう甘いスキンシップは免疫がないのに。
加えて愛しい人が与えてくれる久しぶりの、感覚。待ちわびた恋人からの愛撫は、それはそれは嬉しいことなんだけど…。
そのっ、心の準備が、まだ─────…
「あっ…だ、め…僕、汚い、から……」
「だから消毒してんだろ…」
擽ったい行為が、なんだか恥ずかしくて。
モゾモゾ抵抗してみるも、一向に止みそうにない上原君の愛撫。
ふと顔を覗き見たら…思ったより真剣な眼差しに射抜かれてしまい。更にドキリとさせられた。
「マジで嫌なんだよ…お前が他の奴に触られるとか…」
耐えられない────…
そう言って上原君は、僕の両肩をギュッと掴む。
その表情は、いつかの屋上で垣間見せた…不安を露にした時のものと、よく似ていた。
「この傷も、誰かが触った感覚も…全部、お前ん中に俺以外の奴なんか残したくねぇんだ…。」
つぅ───…と指を滑らせ、頬に触れる。
散々殴られたそこは、腫れぼったく熱を帯びていて。同じくらい熱を放つ上原君の指先と相まって、更に赤く色付くのが判った。
「平気なわけ、ねぇよな…」
切れた唇に軽くキスをして。
それから目元、頬と傷付いた箇所を…労るよう、やんわりと舌を這わせる。
時折傷に染みて…本音それだけじゃないけど、つい声が漏れてしまって。
その度に上原君は「ごめんな」って、切なげに微笑んではまた…傷口に優しい口付けを落としていった。
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