114 / 117
112
side.Tamotsu
「あの時─────」
ぽつりと、キスの合間に上原君が語ってくれたこと。
学校に現れたマキ君を、興味が無いが故に、敢えて好きにさせてしまったことへの後悔と…。
陸人君とのキスの件を知った経緯だとか、僕が気になっていた事を色々と説明してくれた。
話した後、自分に非があったと何度も謝ってくれた、上原君だったけれど…。
「高月の事とか…お前が絡むと、すぐ理性飛んじまうからさ…」
本音を晒せば、お前を独占してしまいたい。
誰にも触れさせず、自分だけを見ていて欲しい。
包み隠さない彼の欲に、改めて触れた僕。
気持ち悪いだろ、情けないだろって上原君は自嘲するけれど…
寧ろそんなことはなく…素直に嬉しいって、僕は思ったんだ。
今回の事だって元を辿れば、僕が弱いばかりに上原君に愛されてるっていう自信が…持てなかったから。
結果的に、擦れ違ってしまったわけだし…。
「僕も、ごめんねっ…」
陸人君からの好意すら、ピンとこなくて。
だからって上原君の気持ち考えず、軽率な行動ばかりしていたと思う。
曲がりなりにも恋人同士なんだから…。
相手を想うなら、それこそちゃんと本当の気持ちは、吐き出していかなきゃダメだったんだ。
「いいさ。これから先は長ぇんだし…な?」
目まぐるしく時間が過ぎたけど、まだ付き合って1ヶ月と少し。
時が経って、どんどん関係が深まり好きが増えれば。お互い嫌な部分だって、見えてくるかもしれない。
「情けねぇ話、今回のはかなり参ったけどよ…。今までの自分を反省したっつうか、良い教訓にもなったしな。まあ…結果オーライってヤツだから、こんな風に言えんだろうけど…。」
「うん、そだね…」
こつんとおでこをくっつけ、視線を交わす。
久しぶり…って言っても、大した時間でもなかったはずなのに。
まるでもう随分と長い時間、触れてなかったかのように…擽ったい。
見上げれば、はにかんで返すキミ。
なんだか付き合い始めた頃みたいで、お互い遠慮がちにではあったけれど…。
じゃれ合うよう頬を擦り寄せ、それからはごく自然に。僕らはどちらともなく、口付けを交わしていた。
それはそれは、甘くて愛おしい…啄むようなキスを。
「保…」
「んっ…」
触れたまんまの唇が、僕の名前を囁いて。
とろんと吐息混じりに返事をする。
「本当は、今すぐにでもお前を抱きてぇ…けど、」
さすがに無理はさせられないだろって、気遣ってくれる上原君。
そんなことない、キミが望むなら僕は平気だよって…応えようとしたのだけれど。
「や…いいんだよ。今は……」
繋がるだけが恋人同士の営みではない。
こうして触れ合えることが、どれだけ幸せなことか。
それでも本音は上原君と同じ、僕だって実は欲に任せてみたいなとは、思ったけど…。
「好き…大好き…」
「ああ、俺もだ…」
アイシテル───普段は恥ずかしさが邪魔をして。なかなか口には出来ないような愛言葉を。
そんな昂る想いを柔らかなキスと愛撫に馳せ、互い確かめるかのように。
僕達は何度も何度も、重ね合わせた。
ともだちにシェアしよう!