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第5話 くさくさする時は

「全く、アイツら文句があるなら堂々と俺に言えっての。」 俺はカフェランチのミートボールにフォークをぐっさりと突き刺しながらボヤいた。流石の傍若無人である俺もここまでやっかみが多いと気分が凹んでくる。俺の頬を硬い指で突っつきながら壱太が笑いながら言った。 「涼介に直接文句を言うほど度胸がある奴はいないさ。お前、超怖ぇし、報復されそうだし。」 俺は眉を上げて壱太を見ると、ミートボールを目の前に掲げてニヤリと笑った。 「俺はこの高校に君臨するつもりだからな。多少の恐怖政治も致し方ない。」 ミートボールを口に放り込んだ俺は、後ろから頭をポンと叩かれた。髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜる手を掴んで、その手の持ち主を睨んだ。 「蓮、やめろって。お前、何でいつもそれやるの。」 蓮は柔らかく微笑んで言った。 「恐怖政治でピリついた涼介を癒してるのさ。」 俺は訳わかんねぇなと言いながらも、確かにクサクサした気持ちは収まってきていた。蓮のあの微笑みには負ける。昔からあいつは俺がイラついてると、身体のどこかに触れてあんな風に微笑む奴だった。 俺はある意味、あの微笑みに洗脳されていて、何だか色々気が削がれるんだ。 「篤哉は一緒じゃねーの?」 壱太が尋ねると、蓮は自分は野暮用だったから一緒じゃないって言った。高校入学してから蓮がコソコソしてる気がして、じっと見つめて尋ねた。 「お前、彼女か彼氏出来たのか?」 蓮は俺をチラッと見ると、壱太の揶揄いを交わしながら指を唇の前でクロスさせた。 「またそれか。蓮は本当、秘密主義だな。…まぁ、本気の相手が出来たら紹介しろよ。」 俺が口を尖らせてボヤくと、壱太は俺に尋ねた。 「蓮は絶対喋らないけどさ、お前は俺ほど遊び回ってる訳じゃないだろ?最近は誰とつるんでんの?」 俺は今まで機会がなくて言えなかった事を言うチャンスだと思った。別に隠してるわけでもないし、変に噂されてこいつらの耳に入るより良いかと思ったんだ。 「あー、二年の鷺沼?別に付き合ってるわけじゃないけど、後腐れなくていいんだあの人。」 二人が目を丸くして同時に俺を見た。はぁ、絶対そうなると思った。壱太がうまそうな骨を見つけた犬の様な興奮状態で俺の腕を揺さぶって言った。 「おいっ、マジか。やっぱりな、去年から女子に冷たいと思ったら、宗旨替えした訳?言われてみれば納得だわ。…でも鷺沼さんてタチだろ?え、めっちゃ意外なんだけど!うわー、マジか。ショックだわー。」

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