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第6話 俺の相手
壱太があんまりにも騒ぐので、俺は静かにする様に言うと顔を寄せて言った。
「だから言うの嫌だったんだよ。去年ちょっとキッカケがあってさ、自分の性癖なるものに気付かされたって訳。女子は冷たいだの、何だのって面倒臭いだろ?それに理玖ほど可愛い女の子も居ないし。」
すると壱太は嫌な顔をして呟いた。
「うわ…。確かにその通りだけどさ、ブラコン拗らせると、男に走るって訳なの?蓮お前ショックじゃないの?男と付き合うのはともかく、こいつが、ほら下とかさ…。いつも王様みたいにしてんのにさ。」
蓮はまだちょっと呆然としてたみたいだったけど、壱太に聞かれて、ハッと気を取り直して口籠った。こいつは口数は少ないけど、ハッキリはしてるんだ。
こんな風に動揺してるのは珍しい。俺が蓮を見つめていると、蓮は少し顔を強張らせて言った。
「俺も驚いた。ちょっと予想外だったし。…そっか。でも、二年生の鷺沼さんてあんまり良い噂聞かないけど…。大丈夫なの?」
俺は週に一、ニ度気が向けば関係してる鷺沼を思い浮かべた。190cm近い鷺沼は水泳部で、学年はひとつ上のアルファだ。
キッカケは忘れたけど、鷺沼の親もアルファとオメガの番で、鬱陶しいですよねって話からアルファ同士の彼氏彼女が楽だとか、お前男はいける口なのかっていきなり口説かれたんだった。
俺は背は高いけど、あんまりマッチョでもない。だからゴリゴリのマッチョ相手じゃ、何されても抵抗できなさそうで嫌なんだけど、鷺沼はそこまでじゃなく見えた。
「…俺、下ですけど。それでも良いなら付き合いますよ。」
そう答えた時の鷺沼の顔はちょっと見ものだったな。ちょっと顔を赤くして、両手で顔を覆って項垂れてたけど、俺をチラッと見て言ったんだ。
「お前の顔、凄い好きな顔なんだよ、俺。お前とヤレるならって、下になるのも覚悟してたんだけど、良いの?」
俺はちょっと弱気な感じを出してくる、遊び人で通ってる鷺沼が可愛く思えた。一緒に歩道の車止めの上に座っている鷺沼の肩を組んで、耳に唇を寄せて言った。
「あの時だけ、タメ口で良いなら、ね。」
鷺沼はグッと唇を噛んで俺を引っ張り立たせると、ニヤリと笑って言った。
「いいぜ。俺のこと呼び捨てても。俺も三好のこと名前で呼ぼうか?」
俺は弾けるように笑って言ったんだ。
「じゃあ、その時だけ呼び捨てますよ。俺のことは今みたいに三好でいいです。だって俺たち遊びでしょ?」
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