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第15話 禁欲中
鷺沼とセフレ解消してから、しばらく俺は遊ぶのをやめた。俺はいつもと変わらず遊び歩いている壱太に尋ねた。
「お前って、そんな呑気に遊び歩いてて、刺されたりしないの。」
壱太は俺にウィンクすると言った。
「俺はご奉仕する方だから大丈夫。ご奉仕される方が別れ話したら刺されるかもな?」
俺は壱太の言う事にも一理あるかもなと思いながら、ため息をついた。鷺沼は俺のこと刺すわけじゃないけど、明らかに俺があいつを傷つけたのは間違い無くて、後味が悪かった。
だからしばらく禁欲してるのも、ある意味鷺沼への償いだ。別れて直ぐに遊び歩いてたら、鷺沼も気分悪いだろ。悩める俺の隣で、ニヤニヤとやに下がった顔で幸せオーラを撒き散らす男を睨んだ。
実際篤哉がこんなに鬱陶しい奴だと思わなかった。相手がいくら俺の弟とは言え、いや弟だからダメなのか、篤哉の口から理玖の可愛さを聞かされるこっちの身にもなって欲しい。
「おい、こいつどうにかしてくれよ。」
呆れた壱太に、俺は肩をすくめて言った。
「俺にもどうにもならないよ。こいつはもう拗らせ切った初恋に有頂天だから。」
初恋?と驚く壱太に篤哉はにんまり笑うと言った。
「俺、理玖が生まれた時、可愛くて可愛くてしょうがなかった。でもそうだなぁ、小学4年の時に本当に、あぁ大好きだなぁって思ったよね。あれってやっぱり初恋だよなぁ。
ちょっと理玖が幼過ぎて、俺世間的にやばいやつになりそうだったからマジで悩んだけど。でも運命の番なら当然だったんだ。」
俺たちはうっとりと話す篤哉に呆れて、はいはい、そーですかって笑った。すると黙って聞いていた蓮が言った。
「案外子供の頃の気持ちって、大人になっても残ってるもんじゃないの?それに気づかないこともあるかもしれないけどね。」
そういえば蓮には、本命がいるんだって思い出した。でもそのことを直接聞いてるのは俺だけかもしれなかったから、皆の前では突っ込めなかった。その時、壱太が俺に尋ねた。
「…お前鷺沼先輩とセフレ解消したの?なんか鷺沼先輩が、めっちゃ落ち込んでるって噂で聞いたんだけど。それでお前も、最近大人しくしてるわけ?」
「振ったというか、振られた?本気になられても、俺はそんなつもりないから、関係続けるのは難しいだろ?鷺沼がもう辛いって言うからさ。…俺ってまだ人を好きになったことないかもなぁ。
篤哉の好き好きって邁進してるの見てると、ある意味悩みが無さそうで羨ましいよ。壱太はまだ遊び歩くんだろ?蓮、蓮は高校生の恋はどういう予定な訳?」
俺が蓮に尋ねると、蓮は俺を見つめて黙り込んでいたけれど、ボソっと言った。
「…俺?俺は絶対逃すつもりはないよ。」
そう言った蓮に壱太と篤哉は凄い盛り上がってた。でも俺は何だか、さっきの蓮の眼差しにちょっとゾクゾクして、親友に邪な感情を一瞬でも感じるなんてやば過ぎだと反省していた。
あー、そろそろ禁欲解禁しなくちゃな。そうしないと俺、親友襲っちゃいそうだ。
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