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第16話 禁欲解禁
「なぁ、お前、また今度会わない?」
またか。俺はベッドから起き上がると黙ってシャワーを浴びに行った。後ろからダメかとぶつぶつ言う声が聞こえたけど、何だか最近面倒な感じだ。
一人一回にしてるせいで、いちいち相手を物色するのも面倒だけど、ああやって言われるのも面倒だ。何も言われなかったら、こっちから頼むかもしれないのに。
高校生だからしつこいのかと、大学生にターゲットを変えてみたけど、あんまり変わらなかった。そう考えると、鷺沼はよく出来たセフレだったんだ。
エッチは上手いのに、煩いこと言わなくて。あー誰か俺のしたい時だけ、濃厚なえっちかましてくれないかな。俺が塩対応していると、相手の大学生がルール違反な事言って悪かったって謝ってくれたから、根は悪い奴じゃないんだろう。
まぁエッチも上手かったしな。鷺沼程じゃないけど。やばい、俺全部鷺沼と比較してばっかりだ。まるで俺が鷺沼好きみたい…。ん?そーなの?まじか…。
俺は挨拶もそこそこに今日の相手と別れると、思い切って鷺沼にメッセージを送った。
『明日時間ある?』
セフレだった時の決まり文句。これで、鷺沼がどう反応するかな。やばい。何だかドキドキしてきた。俺は携帯を握りしめながら、落ち着かない気持ちで自宅に帰った。
結局既読はついたものの、返事は来なかった。
俺はベッドで横になって天井を見上げながら、そりゃ俺の都合の良い様にはならないよなってため息をついた。それに鷺沼にも新しい相手が出来たかもしれないし。
男漁ってた俺に言えることはないか…。俺は何だか気落ちして風呂に入った。少しみそぎ気分で、冷たいシャワーを浴びて出ると、ベッドの上の携帯が青く光っていた。
鷺沼からメッセージが入っていた。
『何』
俺はその1文字をじっと見つめていたけど、思い切って電話を掛けた。
三度目の呼び出しで出た鷺沼の声は、少し強張っている気がする。俺は何て言うか考えてなくて、衝動的にかけたから言葉に詰まった。俺がこんな事になるなんてあいつらが知ったらずっと揶揄われそうだ。
「…あれって誘ってるわけ?でも俺、三好のセフレはやめたって思ってたんだけど。」
俺は携帯をグッと握りしめて答えた。
「…せフレじゃなきゃいいわけ?」
携帯の向こう側で黙りこくった鷺沼が、さっきよりも柔らかい声で言った。
「今から会いたいけど、もう夜中だから。明日放課後正門で待ち合わせしようか。楽しみにしてる。おやすみ…、涼介。」
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