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第37話 蓮side俺たちの役目

結局俺と涼介は、俺たち自身の話をする事はなかった。看病と張り詰めた気持ちで少し青褪めた涼介に、俺が抱えるもどかしい気持ちをぶつける気にはなれなかった。 いつも通りにやって来た涼介は、ソファに座るなり気を失う様に眠ってしまった。俺はキッチンで涼介のために作ったキャラメルマキアートを口にしながら、その疲れ切った姿を見つめた。 突然の思いもしない鷺沼先輩の病気の話は、もう先がないという事実の前に、俺は涼介に何も言えなくなった。当事者である涼介は動揺しつつも、気丈に鷺沼先輩の側に寄り添っていたし、傍目にはそんな状況をおくびにも出さなかった。 下級生の、最近の生徒会長は影があるなんていう噂も、悪気のないものではあったけれど、俺には何だかやるせなくて、知らず知らず顰めっ面になっていたみたいだ。 「おい、お前まで落ち込むなよ。俺たちはあいつをこれ以上落ちていかない様に支えなきゃならないんだからな。今回の事は本当にどうしようもない事なんだ。 人間生きていれば、人間関係も変わっていくだろ?でも死んでしまったら?俺はそれが一番心配だよ。涼介が鷺沼先輩に引っ張られないかって。」 難しい顔でそう言う壱太を、俺は珍しいものでも見る気分で眺めた。同じ気持ちになったのか、篤哉も少しポカンとした顔で壱太を見つめていた。 「何だよ…。二人して。」 篤哉が面白そうに笑いを堪えながら言った。 「いや、壱太がそんな真っ当な事言うのが珍しいって言うか。なぁ、なんか経験でも有るわけ?」 篤哉のそれは冗談半分だったのだけど、壱太は少し黙ってから、俺たちをゆっくりと見回した。 「…ここだけの話、実際にあったんだよ。実は俺の従兄弟が危なかったんだ。従兄弟は恋人じゃないけど、親友が亡くなったんだ。生前、親友は家族の問題があってその事で悩んでいた。 従兄弟は親身に話を聞いていて、その日も落ち込む親友を気にしながら、従兄弟は家に帰った。 それから親友が死んだみたいで…、従兄弟は自分が側に居れば死ななかったんじゃないかって、随分落ち込んじゃったんだ。それからどんどん落ち込みが酷くなって、従兄弟の方も何かヤバくなって。あのまま放って置いたらきっと…。 だから鷺沼先輩を失った後、涼介を馬鹿みたいに落ち込ませちゃダメなんだよ。俺たちが、あいつの事ちゃんと抱きしめてやらないと、な?…蓮の出番だぞ。今度は出遅れるなよ。」 そう言って俺を真っ直ぐ見つめる壱太は、何処か別人の様だった。

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