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第61話 目覚めない弟と親友と

「俺さ、あいつらを見てるとやっぱり運命の番なのかなって思うんだ。」 迎えに来た蓮に俺がそう言うと、蓮はくしゃりと微笑んで俺の手を繋いだ。そして優しい声で俺に尋ねた。 「さっき篤哉が言ってた事?」 俺は駐車場に向かいながら呟いた。 「…まぁそれだけじゃないけど。結局まだ理玖は目を覚まさないだろう?でも最近は一般病室になったから篤哉も見に来れるようになって、それに俺も付き合ってるんだけど。 篤哉が入室すると理玖の心拍数が急に上がるんだ。理玖は目覚めないながら分かってるんだなって。一方の篤哉も理玖の記憶はまだ戻らないけど、初めて理玖を見た時に夢で会った少年と同じだったんだって。 結局、あの二人はずっと繋がりあってる。こんな事故で、引き剥がされたって関係ないんだ。それって凄いだろ?」 俺がそう言って隣の連の顔を見ると、蓮は俺をじっと見つめて言った。 「ああ。そうだな。…俺とお前は運命の番じゃないけど、俺はお前に馬鹿みたいに執着して、惹かれてるよ。知ってたか?」 俺は蓮が急に色気を出してくるから、正直戸惑いつつも嬉しさを感じた。それは急激に俺の身体にじりじりとした焦燥感を植え付けた。蓮はクスッと笑って立ち止まると、俺の顔に指を添わして囁いた。 「なぁ、今夜いいか?」 俺は理玖たちが事故に遭ってから3週間の間、蓮が俺に気遣ってそんな風に色気を出して来ないようにしていたのを察していたんだ。俺は蓮を抱きしめると、がっちりした身体を確かめつつも呟いた。 「…ああ、そうしよう。俺もお前が欲しい。お前は運命の番ではなくても、俺には最高の恋人だ。」 すると蓮は焦らすように俺の唇をじゅっと吸い付くと直ぐに顔を引き剥がして、ギラついた眼差しで言った。 「これ以上はダメだ。路上でお前を犯しそうだからな。」 そう言うと俺の手を文字通り引き摺って車に押し込むと、黙りこくってマンションへ向かった。ピリピリする蓮のフェロモンのオーラに、俺はゾクゾクしながら熱い息を吐いた。 「くそっ!」 罵りが聞こえて蓮を見つめると、信号で止めた蓮がハンドルにもたれ掛かりながら悪態をついていた。そして一瞬俺を見て直ぐに前方を凝視すると言った。 「…そんなに期待されると、俺も辛抱できない。…今夜は寝かさないから。」 赤らんだ顔の興奮した蓮の横顔を、舌舐めずりをする気分で見つめながら俺も答えた。 「ああ、それって最高の言葉だ。」

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