17 / 88
15
side. Subaru
ドクン、ドクン────…
何だ、これは…
今意識を捨てられるなら、
いっそ身体ごと消えて無くなりたい。
なのに眼は、瞬きも出来ないほど固まって、
背ける事すら、叶わない。
ただ、受け入れ難い光景が…
両目を突き破り、脳内を浸していった。
「ンッ…────!」
全力疾走の果て、目を合わせた晃亮の、
悪戯な微笑。
俺の全てを見透かすような、
やけに子ども染みた行動のそれ。
視線で俺を縫い止めたまま、
隣りに座る円サンに手を伸ばし、抱き寄せると──…
彼の唇に、食らいついてた。
目の前の現実。
わざとらしい水音を立て、
見せつけるように舌を絡め味わう。
「んんっ…ふぅッ…───!!」
苦しげにもがき、逃げようとする円サンの髪を
乱暴に掴み、ねじ伏せれば。
恥辱と動揺、
そして恐怖の色をその瞳に浮かべて。
抵抗を、弱めた。
息をするのも忘れ、立ち尽くしたまま、
ふたりが繋がる箇所に釘付けにされる俺。
晃亮の眼はずっと、
俺を解放しては、くれなかった。
「ふぁッ…」
漸く解放されたソコはまだ、糸で繋ぎ留められていて。
晃亮が、赤い舌でぺろりと舐めとる。
円サンは身動きひとつ出来ず…
生理的な涙を浮かべ、茫然としていた。
「よく、聞け…」
それは誰に対するコトバなのか。
円サンも、晃亮の異様な空気を察したのか…。
張り詰めた表情で以て、見上げる。
「まどか。」
やっぱり、そういう事か…
「お前は─────」
解ってる。
俺が欲しがる事自体、間違ってたんだ。
これは命令。
「───────俺のモノだ。」
晃亮が望むなら、
そうあるべきなんだ…。
「え…」
常人にそれが理解出来る筈がなく。
円サンは露骨に困惑して。
けどそんな事は晃亮にとって、どうでも良いことで。
支配という名の下、
晃亮はもう一度、円サンの唇を塞いだ。
(円、サン────…)
愛しいヒトが、目の前で。
唯一、兄と慕ってきた人に、
奪われる。
生まれた時から、定められてた事。
神様はどこまでも
俺に、イジワルだ…
ともだちにシェアしよう!