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side. Subaru 春の陽気は暖かく、 心地良い風をその身に絡め肌を擽るのに。 俺の心は嵐にみまわれたまま… 黒く、燻っていた。 朝目覚めても、 晃亮が部屋から出て来る事は無く。 俺はひとり、彼を避けるように。 普段は朝から滅多に行かない学校へと、足を運んだ。 陽光の熱を含まない、屋上の冷たいコンクリートに寝そべって携帯電話を弄ってはみるものの…。 あんなことの後で、円サンにどんな理由をつけて連絡を取れば良いのか解らず。 ただ、画面を開いては閉じての繰り返し…。 勿論、 向こうからは、何の音沙汰もなかった。 「……………」 もう何時間、ひとりでこうしてるんだろうか。 こんな不良高校、授業なんて、あってないようなものだし。クラスには連んでる奴なんて、ひとりもいない。 まして晃亮は既に3年、森脇と土屋は2年だし。 皆自由気ままで他人に合わせるようなタマじゃないから。 つるんでいるといっても、これといった決まりも約束もなくて。各々がやりたいようにしていた。 貴重なひとりの時間なのに、ちっとも安らぐ事はなく。 頭を過ぎるのは、嫌な事ばかり。 こんな時、土屋でもいたら…アイツはバカみたいに騒ぐし。必然的なムードメーカーみたいな存在だから。 ネガティブに浸る暇もなくて、済みそうなのにな…。 あのふたりとは、俺が鈴鹿に入る前から晃亮と連んでいたから…一緒にいるんだけど。 馴れ合いが苦手な筈の俺が。 こういうカタチで、誰かを必要としたりするのは… 初めてな、気がした。 「あれ~昴ひとり?てか珍しいじゃん、こんな時間。」 カタンとドアが開く音がして。 勢い良く起き上がれば… 軽い口調と胡散臭い笑顔で手を振る、森脇がいた。 「まぁた喧嘩か~?」 森脇達も晃亮の性質を、良く理解していた為。 ひとりきりだった俺に向け、呆れたよう溜め息を吐く。 …というか、 森脇だっていつもは土屋を引き連れてるクセに。 今日は珍しく、ひとりなようで。 のんびりとした足取りで俺の隣までやって来ると、 ストンと胡座をかいた。 「いや…今日は何故か起きて来なかったんだ、晃亮…」 ふ~んと興味なさげに、煙草へと火をつける森脇。 土屋は分かり易い性格だけど、この人はちょっと読めないところがあって。 晃亮とはまた異なる性質だったが… かなり曲者(くせもの)な気がした。 俺が入学した時点で、既に晃亮と一緒だったふたり。 晃亮が2年の頃までは、他にも仲間がいたらしいのだが…。 晃亮を頭にチームを作りたいと言い出した奴らがいて。 そういう事に全く興味が無い晃亮は、案の定そいつらが鬱陶しくなってしまい… ひとりで全員、潰してしまったらしい。 結局潰した全員、晃亮を恐れ離れていき。 最初から晃亮側にいた森脇と土屋だけが、必然的に残ったと言うわけなのだが…。 何故、晃亮についたのか。 その理由は、今も解っていない。 まぁ、至って単純な理由なんだろうけど…。

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