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side. Subaru
「んッ…う…」
「円、サン…?」
覗き込めば、青白い顔で汗だくの円サンが細く目を見開き。曖昧な意識でもって、俺を捉える。
「ひッ…!」
衝動的に飛び起きようとした円サンだったが…
晃亮から受けた暴行で、かなり衰弱していたため。
頭を少し浮かせただけで悲鳴を上げると、
力無く崩れ落ちてしまった。
「もう大丈夫…熱が出てますから、安静にしてて下さい。」
身体を震わせ、怯える円サンを落ち着かせるよう告げれば。漸く現状を把握した彼は、ゆっくり手を付き起き上がる。
その背をそっと支えると、肩が少し恐怖に揺れた。
「ここ、は…?」
「俺の部屋、です…。」
流石に晃亮の部屋へそのまま寝かせるのには、憚 れて。
円サンの身体を出来る限り綺麗にし、自室へと運んだ。
服はみるも無惨な状態だったので。
とりあえず俺の物を着せ、ベッドへと寝かせた。
「一応、身体と…中も洗って、手当てしたんです、が…」
無理矢理こじ開けられたソコは、かなり酷いもので。
全身も痣だらけ、その姿は目も当てられないほどに、
悲惨な状態だった。
汚れは洗い流せても…記憶の中に刻まれた恐怖の傷はもう、一生癒える事はないのではと思うくらい。
生々しさを…物語っていたから。
俺の心臓は抉られるよう、締め付けられた。
「ふ…うぅッ…!」
いつまでも震え続ける手を見つめ、顔を歪める円サン。
自ら身体を押さえ付けても、
更に恐怖が蘇ってしまったのか…
途端にボロボロと、涙を零し始めた。
「円サン…」
音の無い部屋に響く、切ない慟哭。
抱き締めたい衝動に駆られては堪え、奥歯を噛む。
俺にはそんな資格、ないんだ…。
「ごめんなさい円サン…ゴメン…」
どこにも遣り場の無い気持ちを抱え、
ただひたすらに許しを請う。
「ど、してっ…キミが…」
謝るの?…と、痛々しい顔で俺を見上げる円サン。
今にも消え入りそうな貴方の姿に、
俺はまた泣きそうになった。
「俺の所為、だから。晃亮がこんな風になってしまったのは…。だから、悪いのは全て俺なんですっ…」
「昴くッ…」
俺があまりにも情けない表情を、してしまったからか。円サンはトスンとその顔を、俺の胸元へと埋めてくる。
「ど、してっ…こんな事…」
シャツを握り締め縋りつく円サンに、いてもたってもいられず。震える肩を、抱き寄せる。
こんな時でさえ、愛おしくて。
更に背中へと手を回し、ギュッと包み込んだ。
泣きながら、なんでなんでと問われても…
俺には答えられなくて。
ただ円さんの熱で火照る背中を、
そっと撫でてあげる事しか出来ない。
こんな俺達にも分け隔て無く接し、信じて疑いもしなかっただろうに。
まっすぐで純粋な貴方だからこそ…ショックは相当なものだったろう。
「こっ…すけくん、は…?」
ひとしきり泣いて。
少し冷静を取り戻した円サンが、ポツリと不安を零す。
俺達が同居しているのを、今更ながら思い出したのか…
急に瞳を泳がせ、動揺し始めた。
「大丈夫、しばらくは戻ってこない筈だから…」
“こういう事”は初めてじゃない。
女を抱く時にも、こんな風に度々スイッチが入ることがあって…。
本能的に散々弄んだ後は、大抵その場を放置して出かけてしまい。
次の日には喧嘩をして帰ってくるのが、決まり事みたいになっていたから…まず、安心していい筈だ。
相手が使い捨ての女ではなく、
円サンだという不安は、残るけど…。
「もう少ししたら、タクシーでも呼びますから…。それまではゆっくりしてて下さい。」
「う、うん…」
返事をするものの眠ろうとはせず、
シャツを握る手を解こうともしない円サン。
「円サン…?」
顔を覗き込めばまた、擦り寄ってこられて。
体温が触れた箇所から、じんわりと上昇していった。
「ちょっとだけ、こうしてていい?なんか、安心するんだ…」
潤んだ瞳で見上げられ懇願されたら、断れるわけがなくて。
「は、い…」
僅かに震える身体をそっと包み込めば。
円さんは安心したように微笑み返して…
そのまま腕の中で、ゆっくりと意識を手放した。
貴方を思えば、
早くここから帰すのが得策なんだろう。けど、
(少し、だけ…)
許されるのならば。
ほんの一瞬でもいいから、時が止まればいいのにって。
理不尽にも、俺は本気で願っていた。
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