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side. Subaru
『いッ…あアァッ!!』
耳を塞いだところで、掌を容易に貫通して響く、
愛しい人の断末魔の叫び。
壁の向こう、隣りに俺がいると解っていて。
晃亮は今日も狂ったように、円サンを組み敷いては支配した。
『あっ…ひ…うぅ……』
晃亮がどんどん壊れていく────…って、
俺も十分、狂ってるんだろう。
すぐそこで、自分の大切な人が。
苦痛に苛まれているのに。
「ッ………!」
何もせず、じっと佇んでいるだけ。
仕方ない?
晃亮だから?
…だから何だって、言うんだろう。
ひたすら指を咥え、どんどんエスカレートしていく、
晃亮の暴走を見てるだけで。
一体、何が変わるというのだろうか…。
(俺は、どうすればいいんだろう…)
外部からの助けなど、いくら待っても絶対に来ない。
晃亮がいなければ、俺は独りぼっちなんだから。
頼る宛てさえ、何処にも……ない。
絶望的だが、あの晃亮を止められる人間なんて…
もう存在しないんじゃないかとさえ思う。
「クソッ…!」
早く早く、解放して。
少しでも″あの人″が傷つかないいように。
俺はぎゅっと目を閉じて、
その時を、ただただ待ち続けるんだ。
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