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side. Subaru
『おいっ…!』
流石にやり過ぎたと思ったのか、
俺と少年から不良達が離れて行く。
俺を守った少年は、ぐったりと力なく横たわり…
もう、ピクリとも動かない。
(腕、折れてる…)
その身体は、かなり悲惨な状態だった。
『そろそろヤバくねぇか…?』
いくら裏路地と言えど、大通りからはちらほらと人が通り過ぎていて。
誰かが警察に通報するのも、時間の問題だろうから。
不良達は、既に逃げる体勢に入っていた。
『待てよ…』
このまま弱ったまま、我慢してやり過ごせば良かった。
そうすれば、苦しい事も悔しい思いも。
最小限ですぐ終わらせられたのに。
自ら獣道に飛び込んで来た、見知らぬ少年を前にして。
初めて心を、動かされた。
こんな理不尽、
許しちゃいけないんだ、と。
『逃げてんじゃねぇ…!!』
血まみれの拳を握り、闇雲に突っ走る。
解ってる、無駄な事なんだと。
でももう、止まらなかった。
『手間かけさせんじゃねーよっ…!』
もう、動けなくなって。
すぐ横で倒れている少年に、なんとか手を伸ばし…繋ぐ。
(何やってんだって…俺の方だ、な…。)
俺独り、罰を受けていれば良かった。
そうすれば誰も────…
何だろう、この気持ち。
晃亮の時とも、違う…
(ごめん、ごめん…なさい…)
涙が零れた。
情けなくて、弱すぎて。
キミを傷つけてしまった事が、あまりにも悔しくて。
(もっと、強かったら…)
『何だお前──────ぐはッ…!?』
(そうだ、晃亮みたいに強かったら…)
『ヒィィ…!!』
あんな風に、
群を成す不良にも堂々と立ち向かえるような。
絶対的な力が、俺にもあったなら───…
ああ。
『すばる。』
差し伸べられた手は、血塗られていて。
氷みたいに、冷たい。
『こ、…すけ…』
『行くぞ。』
耳鳴りに混じる、サイレンの音。
でも…
(待って、晃亮…)
″あのコ″がまだ、いるんだ。
動かない身体を、晃亮に担がれてしまい。
遠ざかる少年に、必死で手を伸ばす。
(待って、あのコは俺を─────)
助けてくれたんだ。
血のつながりも面識すらない、
普通の少年だったのに。
たったひとりで俺の前に両手を広げ、
大丈夫だよって。
だからお願いだ────…
(ごめん、ごめん。弱くてごめん…)
キミを残し、薄れてく意識の中で。
いつかのように、俺は何度も何度も。
強く強く、願ったんだ。
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