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side. Subaru 「あの後サツから連絡入ってよ。円は全治3ヶ月、あちこち骨まで折れて大変だったんたぞ。」 「…すみません、全て俺が招いた事です。」 頭を下げ、円サンに向き直れば。 彼は口元を押さえ、かなり思い詰めた表情を浮かべていた。 「…円はあんまし覚えてねぇんだ。あん時の事。」 「そんな気はしてました。あんな辛い出来事なら…。」 「…少しなら、覚えてるよ…オレ。」 ずっと黙っていた円サンが、徐に口を開く。 「覚えてるって言うか、たまにだけど見るんだ…その時の夢を。」 夢?と問えば、うんと頷く円サン。 あの日を境に度々現れる夢。 ボロボロになった自分の手を。 同じように傷ついた手で、ギュッと握り締めてくる少年の切ない表情。 意識も視界も虚ろだったから、 顔はどうしても朧気にしか見えなかったけど…。 「多分、それが…昴クン、なんだと思う。」 「円サン…」 あんな苦しいだけの記憶など、全て忘れた方が良かった筈なのに。 …なんて、嘘は吐けそうにない。 僅かでも、俺のかけがえのない大切な思い出を。 貴方も共有していたのだと思うと… 本当は嬉しくて堪らなかった。 「おい、昴。」 呼ばれて振り向けば、真顔の遥サンと目が合い。 「晃亮のコト、教えろ。」 「え…?」 ニヤリと笑う遥サンに、何か大人の余裕みたいなものを感じて。 「お前じゃ、持て余してんだろう?」 否定出来ず、黙りこくっていたら… 彼は構わず話を続けて。 「躾てやるよ、その狂犬。」 晃亮の性質を最も知る俺が。 それでも何故か、この人の言葉がハッタリではないのだと確信し… 「…お願い、します。」 俺は生まれて初めて、本気で誰かを頼り… 深く頭を下げていた。

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