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side. Kousuke 「よぉ、コースケ。」 組み敷いた円をそのまま置き去りにし。 マンションを出て、しばらくふらふらした後。 近所のいつもの公園前を通りかかったら。 アイツがまたそこにいた。 「はる、か…」 「おっ、覚えてんじゃねーか。」 すっかり傷の癒えた顔に満面の笑みを湛える男、遥。 相変わらず無遠慮かつ無警戒で、 難なく俺の領域へと踏み込んで来る。 「円、いるだろう?迎えに来たんだけどよ。」 「…………」 黙っていると、見透かすよう目を細め捕らえられる。 暫く、その眼に晒されていると… 「どうした?元気ねぇなぁ。」 「?」 俺はいつもと変わらない。 もとより、感情を顔に出せる人間でもない。 なのにコイツはなにを言ってる? 「自分でも気づけねぇくらい重症なんだなぁ、お前。」 スッと近づいて来る遥に警戒するも、 目の前に立つことを許して。 いつになく慎重に、遥の動きをじっくりと伺えば。 コイツはたぶん何もしてこないのだろうと、 一度は握った拳をすぐに緩めた。 「ちったぁ解ったか?」 大事なモノ。 何のことだかさっぱり解らないし、 元より考える気すらない。 ただ、問われる度に何も浮かばない空っぽな自分に。 少し、イライラした。 「…………」 中途半端なイキモノ。 親ですらそう罵って、煙たがる。 大事なモノどころか、 最低限ヒトが持っているハズのモノすらない自分だから。 コトバにする想いもなく。 下手に出てもまた蔑まれるのがオチ。 今ではそういう他人の目すら、どうでもいい。 「たくっ…んな顔してんなって。」 だが、コイツは違う。 怯えないし、逃げないし、壊れない。 コイツには殴られたが。 アイツらのとは、なんとなく意味が違った。 それどころか、誰も寄り付かない俺に手を伸ばして。 勝手に触れてくる。 「ガキのクセになぁ…おらおらっ!」 ガシガシと、乱暴に頭を撫でられる。 今は髪を下ろしたままだったが、グシャグシャにされてしまった。 「甘え方すら知らねえなんて。とんだクズ親、引いちまったんだな…」 ああ、やはりコイツは円の兄貴なんだなと。 なんとなく、解った気がした。 「今日もひとりか?昴ってのはどーした?」 「?」 遥はナゼ、その名を知ってる? 「すばる…」 ずっと一緒だった。 そうしないと、生きてはいけなかった。 昴も、俺も。 “生きる意味”など、考える必要ない。 イキモノはただ、本能でその身を守るだけ。 「なあ、お前さ…」 大事なモノ、あったかもしれない。 「お前、円に惚れてんのか?」 「?」 「それすらわかんねぇのか…」 参ったな、と溜め息を吐く遥。 また少し、イライラする。 「が、好き合ってるってのは?」 「…………」 好きってなんだ? 俺が円を?円が昴を? 昴が円、を…? 空虚な内でそれらを反芻すると、 湧き出てくるのは… 闇に潜む住人。 昴は笑った。 小さい手でギュッと握り締めてくる力が、 思ったより強くて。 守ろうとしない大人の代わりになるんだと。 初めて見つけた存在意義。 痛くても苦しくても。 俺が傷つく度に、昴がごめんなさいと泣くから。 俺は泣かないと決めた。 心があると弱くなるなら、 ソレを捨てて耐え抜く事で。 いつの間にか泣き方と一緒に、 笑う術すらも見失ってしまっていた。

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