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side. Kousuke 「フラれちまったなぁ。」 公園のベンチ、当たり前に隣りに座る遥が言った。 「気にすんじゃねえよ。俺だって可愛い弟をアイツに持っていかれたんだからよ?」 そう言って、またガシガシ頭を撫でる。 運命共同体───… 俺と昴はずっと、そうあるモンだと思っていた。 他人は要らない。 血の繋がりもクソ喰らえ。 信じるモノ、信じられるモノも互いだけであると。 何も疑っていなかったのに。 アイツは円を選び、俺を捨て。 初めて牙を剥いた。 俺が昴を憎んだ事は無い。 端から憎むべき対象ではなかったし。 唯一俺を必要としてくれたのが、 昴だけ、だったからだ。 それを伝える術すら解らず、 日を増すごとにアイツから笑顔が消えて… 同じように、俺も笑えなくなった。 俺が存在し続けるには、お前が必要だったから。 お前が言う“罪”を利用して、 束縛もした。 余計にお前の心を、遠ざけるとも知らないで… 「俺は…」 結果、なにも失くなった。 ソレしかなかったのに。 俺は敵と見做されて… それでもにいる理由は、 どこかにあるんだろうか? 「晃亮、お前…」 「……?」 「ほら、手。」 言われて気付く。 握り締めた手に、爪が食い込んでいて。 血が滲む。 痛くはない。どうでもいい… 「たく、見てらんねぇな…お前は。」 向かい合うように、 遥が手を取りそれを解いて包み込む。 同じような男の手。あったかい。 「このまま放って置いたら、お前野垂れ死んでそうだしなぁ。」 悪戯に笑うと、目尻が下がる遥。 死ぬ、か。それでもいい… そんなコトをぼんやり考えていたら───── 「うち来るか?コースケ。」 「?」 唐突に遥がそう問い掛ける。 「少し距離を置いたらいい。俺は一人暮らしだし、部屋も余ってるしよ?それに────」 お前躾られんの、俺しかいないだろうし。 「どーヨ?」 今すぐ決めろと迫る遥に、思わず。 「いく。」 そう応えていた。 「そーかそーか、よしよし。」 面倒臭せぇけど仕方ねえなと、 そんな風には見えないくらい嬉しそうに笑う遥に。 また、頭をグシャグシャにされた。 …この手は、悪くない。 「んじゃ、あのマンションは昴と円にくれてやれ。」 コクリと頷く。 不思議と寂しいとか、嫌な感じは、吹き飛んでしまっていた。 「お前はガキなんだから、今のうちに甘えとかなきゃダメなんだよ。」 遥にガキ扱いされるのは、いやじゃない。 全ての大人に対してとは、思わないけれども。 「はるか、はるか。」 「ん?どーした?」 コイツなら許せる、 そう、思った。

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