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2.二人で初めてのクリスマス

「ん……」 「サツキ……」  眼鏡をそっと外して、前髪を梳く。  前よりかは短くなった前髪だけど、サツキの可愛さに誰かが気づいたら大変だ。  俺はサツキがいないとダメだから、他の誰にも渡したくない。 「ん……ん?」 「起きた? 起きてないならもう一回キスする」 「んー……良く見えな……」  寝ぼけているのでもう一度キスをする。  ちゅっ、ちゅっ、と、軽く触れ合わせると、少しずつサツキの目が開いてきた。 「ん、んんっ? ふぇ……? リ、リツキ……?」 「ん。起きたか? 待たせてごめんな」  柔らかな髪を梳くように、優しく撫でるとサツキの顔が分かりやすく赤くなってきた。 「な、な、な……」 「何したのかって? キス」 「き、き、き……」 「キ、ス。もう少ししたいんだけど?」  焦ったサツキが尻で移動して俺から少し距離を取る。  そんな、取って食べたり……まだしないのに。 「ふ、普通に起こしてって! 何で、キス!」 「したかったから」 「そ、そういうのは、ある、けど……俺にしなくても!」 「サツキが好きな本に書いてあるだろ? 萌えシチュ? だっけ」  俺が言葉にすると、分かりやすく動揺するサツキがまた可愛い。   「なぁ、サツキ。俺、疲れたから癒して?」 「癒して? って……。また、何を言い出して……」 「サツキが足りない」 「また、そういうこと、言うし! 甘ったるく言うなって!」  そう言いながら、満更でもなさそうなサツキを見ていると俺も嬉しくなる。  我慢できなくなって、サツキに向かって飛び込むように覆いかぶさる。 「わぁっ!」 「サツキ、ただいま」  サツキの胸元に顔を擦り寄せる。  バイト上がりの服じゃなくて、わざわざココで着替えてくれたサツキは、俺が用意している大きめの長袖Tシャツと短パン姿だ。  服からは俺が使用している爽やかな香りの柔軟剤の香りがする。 「う……うん、おかえり」  逃げずにこわごわと俺を撫でてくれる。  俺も遠慮なく擦り寄って、サツキを堪能する。 「リツキさーん? 俺、いつまでこうしていればいいの?」 「いつまでもって言いたいところだけど、まずはケーキとか食べちゃうか」  最後に不意打ちで、ちゅっとしてから身体を離した。 +++  リツキ……そんな萌えシチュとか、しなくていいのに。  俺のそういうところもひっくるめて好きって言ってくれるのは嬉しいんだけど、自分がやられるのはなかなかなれない。  もっと可愛い受けちゃんがやられているならまだしも、俺はタダのオタクだし。  座ってていいからと、自分もあっという間に部屋着に着替えたリツキがケーキとシャンパンを用意してくれる。  シャンパンとか! 何、そのシャレオツなもの!  一応、お酒も飲める年齢だけどシャンパンなんか飲んだことなかった。 「ケーキ、ブッシュ・ド・ノエル?」 「え? あぁ……何か適当に買ったんだけど」 「いいね、じゃあ写真撮って……食べよう」 「うん。いただきます」  余っていたヤツを適当に買ったとはいえなくて、適当に頷いちゃったけど、そんなオシャレな名前があったとか知らなかった。  コンビニのケーキでも、リツキと食べるといつもより美味しい気がした。

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