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第一章・2
やがてドレスアップした麻衣が現れ、父は自然とうなずいていた。
若々しい、華やいだ明るいグレーのスーツに身を包んだ麻衣は、親の目から見ても美しかったのだ。
清潔感のあるサラサラの髪は栗色で短く整えてあり、ボーイッシュな美少女と見まがうほどだ。
抜けるように白い、きめ細やかな肌。
整った目鼻立ちに、完璧なバランスの手足の長さ。
その姿に、父は亡くした妻に感謝した。
美しかった母そっくりに、麻衣は成長していた。
「とても良く似合っているよ、麻衣」
「ありがとうございます」
そして二人は、運転手付きの自家用車に乗り込んだ。
今のままでは、このドライバーにも暇を出さなくてはならなくなる。
改めて麻衣の父は、我が子にすがる思いだった。
どうか、資産家の若者とお近づきに。
あわよくば、成婚を。
父の祈りを乗せて、車は走った。
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