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第一章・3

「お父様、今日はどちらへ?」 「ん? うん。パーティーだ。麻衣も、楽しむといい」 「どういった趣向ですか? 主催は、どなたですか?」 「お前は、そんなことを気にしなくていいんだよ」  ただ、笑顔を忘れずに。  色んな方々と、交流を持ちなさい。  そんな感じで、ごまかす風の父だ。 (変な、お父様)  釈然としないまま麻衣は、街中心にそびえ立つパーティー会場に着いた。 「ホテル・アスカ。ということは……」  主催は、飛鳥家のどなたかだな、と麻衣は察した。  この国で、屈指の資産を誇る、飛鳥グループ。  経営のトップは皆、飛鳥の血縁者だ。  その結束力で、古くから経済界のトップをひた走って来た。  勢いの強い飛鳥家のパーティーに、落ち目の早乙女家が出席するとは、一体。 (しかも、お父様の連れが、僕……?)  考えても、解らないことだらけだ。  ただ麻衣は、コートをホテルスタッフに預けて、大広間に進むしかなかった。

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