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第二章・3

 周囲に比べて明らかに小柄で幼い麻衣に、響也は少し驚いたように目を見開いた。  しかし、それは一瞬のこと。  すぐにあの、穏やかな微笑みを、麻衣にも向けた。  手にしたカクテルグラスをわずかに掲げて、響也は麻衣に声を掛けて来た。 「こんばんは、早乙女 麻衣くん。楽しんでいますか?」 「僕を、ご存じなんですか?」 「今夜のお客様方は、全て把握していますよ」  そう。  このパーティーは、社交界の出会いの場。  若い男女を結ぶ、マッチング・パーティー。  だがそれは、表向きの名目だ。  響也は、自分のパートナーにふさわしい人間を求めて、宴を開いた。  招待状は、あらかじめ目ぼしい女性に照準を絞って、送った。  まあ、女性ばかり招待しては、あまりにも見え見えなので、同程度の数の男性も、招待した。  ところがそこへ、ぜひ参加させて欲しい、と願い出て来た人間がいた。  麻衣の父だ。 『息子の第二性は、オメガです。充分、お世継ぎを授かることはできるかと!』  早乙女家の財政がひっ迫していることは、響也の耳にも入っている。 (飛鳥家の財産目当てに、我が子を嫁がせようというのか?)  面白い。  つまらない人間ならば、少しからかってやるか。  そんな軽い気持ちで、響也は早乙女家にも追加で招待状を送った。  このような顛末があっただけに、麻衣の存在は響也にとって、強く記憶に残っていたのだ。

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