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第三章・3
「僕でしたら。まず、月面基地の建設に着手します」
「ほう」
響也は、感心した。
(なかなかに、スケールの大きなことを言うな)
だが、麻衣の続く言葉に、声を失った。
「そして棟上げ式を開き、月のウサギさんと一緒についた、お餅をまきます!」
鎮まっていた周囲は、ホッとしたような笑いに包まれた。
「待っていてください、皆さん。地球に向かって、餅まきをしますから!」
麻衣の周りで、さらに明るい笑いがはじけた。
「それはいい。私のところにも、ちゃんと投げて欲しいね!」
「私も拾うわ。おひねりの中に、お星さまの金平糖を入れてちょうだい!」
「私はコインがいいな。5円玉で、ご縁を結んでくれ!」
話題の中心は、すっかり麻衣だ。
響也は、参ってしまった。
美しい人間ならば、これまでに何人も出会ってきた。
賢い人間ならば、これまでに何人も出会ってきた。
縁を結び、跡継ぎを授かろうとしてきた。
(だが、この子はどこか違う)
これまでに出会ってきた人間にはない魅力を、麻衣に感じていた。
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