13 / 230

第三章・4

 正直、18歳のオメガ少年など、眼中になかった響也だった。  写真の麻衣を愛らしい子だとは思ったが、結婚となると話は別だ。  女性の方が妊娠しやすいし、流産の可能性も低い。  そんな理由から、婚約者候補からは最初から外していた。  選ぶなら、第二性がアルファの、優秀な女性を。  こう、思い込んでいたのだ。  だが実際の麻衣を見て、その人柄に触れて、響也は自分でも思ってもみなかった行動に出た。  考えるより先に、動いていた。  料理が運ばれてきて、人々の気がそちらに逸れた時のことだ。 「麻衣くん。これを」 「何でしょうか」 「一人で、そっと読んで欲しい」  響也は、麻衣に四つ折りにした小さな紙片を渡していた。  それきり彼は離れてしまったので、麻衣は不思議に感じつつも紙片を大切にポケットへ入れた。  そして、広間の隅にいくつか設けられた、休憩用のソファに腰掛けた。 「ハズレ、とか書いてあったら、空しいよね」  そんな風に小さく笑いながら、全くの無防備で響也から渡された紙片を開いた。 『パーティーが終わったら、ぜひ二人きりで会いたい。控えの間に迎えを寄こすので、待っていて欲しい』  麻衣は、我が目を疑った。 「こ、これって……!?」  まさかの、響也からのお誘いだった。

ともだちにシェアしよう!