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第三章・5

「いや、でも。そんな、どうしよう」  麻衣は、動揺した。  確かに、早乙女家のために、富豪の人間とお近づきになるつもりだった麻衣だ。  しかし事もあろうか、この国で一番の資産家から、声がかかるとは! 「とにかく、お父様に報告しよう」  驚きながらも、その胸には喜びもあった。  もし飛鳥家と縁ができたなら、傾きかけた早乙女家は息を吹き返せるのだ。 「お父様、ビックリなさるだろうな」  そして、この良縁を歓び、勧めてくださるだろう。  そう思って、麻衣は控えの間に移り、そこに待つ父に事の次第を打ち明けた。 「ま、まさか。まさか、飛鳥さんが……?」  麻衣の父は絶句し、紙片を震える手で何度も読み返した。 「喜んでください、お父様。僕、すごいお方と、お近づきになれました!」 「ダメだ」 「えっ?」 「ダメだ。飛鳥さんだけは、ダメだ!」  そんな、と麻衣はうろたえた。 「でも! お父様は、僕に良縁を結ばせようとして、このパーティーに!」  確かにそうだが、と父は険しい顔だ。 「それは、他のどなたかの話。『青髭公』の飛鳥 響也さんに、可愛い息子をやるわけにはいかん」  思わぬ、父の反対だった。  

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