16 / 230
第四章・2
「早乙女 麻衣さまは、いらっしゃいますか?」
男は、響也の使いの者だった。
「飛鳥様のお部屋へ、ご案内いたします。どうぞ」
「お父様。僕、行ってきます!」
「待ちなさい、麻衣!」
親子の何やら揉める様子に、男は困り始めた。
「あの、どうかなさいましたか?」
「どうしたもこうしたも、無いよ! 君、飛鳥さんに伝えたまえ。息子は渡しません、と!」
父親の剣幕と、その言葉の内容に、男の顔は一気に青くなった。
「それは困ります。麻衣さまをお連れしないと、私は一体どうなるか!」
「君の事情など、訊いてはおらんよ」
「最悪、お暇を出されてしまいます! お願いします。つい先月、娘が生まれたばかりなんです!」
今度は父が、男の剣幕に押された。
確かに『青髭公』の響也なら、やりかねないと思ったからだ。
ともだちにシェアしよう!