17 / 230
第四章・3
「お父様。今回は、この方に免じて、僕を行かせてもらえませんか?」
「しかし……」
「別に、今すぐに結婚式だ、というわけではないんです。それに……」
それに、響也さんが僕を気に入ってくださるとは限らない、と麻衣は言った。
「少しお話ししたら、興味が失せてしまわれるかも」
「なるほど、そうか」
父は頷き、麻衣に良からぬ入れ知恵を始めた。
「なるべく、嫌われるように振舞いなさい。音を立ててお茶をすするとか、静かなシーンでおならをするとか」
「もう! 嫌ですね、お父様ったら!」
それでもやはり、父は父だ。
麻衣を心配して、今夜はこのホテルに泊まることにした。
「フロントには伝えておくから。飛鳥さんとの面談が済んだら、私の部屋へ戻っておいで」
「はい。ありがとうございます、お父様」
父は心配そうに、麻衣は笑顔で、控えの間を出た。
ともだちにシェアしよう!