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第四章・4
私は、ここで。
そう言い残して、使いの男は消えた。
麻衣の前には、美しい木目のレリーフが入った、銀色に輝くドア。
周囲には、誰もいない。
いや、このフロアには、他の客室が一つもない。
最高の、極上スウィートルームで、響也は待っていた。
(防犯カメラで、僕の姿が解っているはずだ)
そんな風に考えて、麻衣は少し首を上に傾け、虚空に向かって話しかけた。
「こんばんは、響也さん。お誘い、ありがとうございます」
するとドアが音もなく開き、中から光が漏れ出でた。
『どうぞ。待っていたよ』
インターホン越しに、あの優しい低音が響く。
麻衣は、わくわくと響也の待つ部屋へと入って行った。
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