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第五章 夜景と恋とかくれんぼ
出会ってから、まだ一日も。
いや、半日も経っていないのに。
響也と麻衣は、肩を並べてロマンチックな夜景を眺めていた。
響也の手は麻衣の肩を抱き、まるですでに恋人のような振舞いだ。
だが、麻衣は無邪気そのものだった。
瞳を輝かせ、眼前に広がる夜景に夢中だ。
何となく、麻衣のペースに乗せられているような違和感を覚えた響也は、少し意地悪な問いかけをしてみた。
「麻衣くん。この夜景は、確かに美しい。だが、それだけでは片付けられない問題がある、とは思わないか?」
「はい、そうですね」
「例えば?」
少し黙ってしまった麻衣に、響也はほくそ笑んだ。
(さて。どんな返事をするんだ、麻衣くん?)
エネルギー問題か、それとも自然破壊か、はたまた環境汚染か。
こういったことを考えている響也の隣で、麻衣は彼が考えているより遥かに、深刻だった。
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