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第七章 子羊のように?

 響也から贈られたキスは、すぐに終わった。  短い、可愛らしい口づけ。  これは、ほんの挨拶代わりだ。  初めてだ、と伝えて震える麻衣を、荒々しく蹂躙するほど、響也は飢えてはいなかった。 「キスも、初めて?」 「はい……」 「どう? 初めてのキスは」 「……素敵、でした」  過去形で言わないで欲しい、と響也は二度目のキスをした。 「今夜は、何度でも。素敵なキスを、しよう」  響也の色気と包容力に、麻衣はのぼせそうだった。  しかし、ここで我を忘れるわけにはいかない。  麻衣は、自分を安売りするつもりは、さらさらなかったのだ。 「待ってください、響也さん。お願いがあります」 「大丈夫。優しくするよ」  そうではなく、と麻衣は響也を正面から見つめた。 「僕と、婚約して欲しいんです。そして、早乙女家に救いの手を、差し伸べて欲しいんです」  何と、と響也は驚いた。  この場この時になっても、まだ地に足を付けているとは。 「約束してください」  麻衣のまなざしは、真剣だった。

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