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第八章 飛鳥家響也宅へ

 麻衣の父は、息子が響也の婚約者として飛鳥の屋敷へ入ることを、喜ばなかった。  いや、反対さえした。  なにせ、『青髭公』と噂される男が相手だ。  麻衣が苦労したり、悲しい目に遭ったりするのでは、と気を揉んだ。 「大丈夫です、お父様。響也さんは、とても優しい方です」 「元・婚約者の令嬢たちは皆、そう言うんだよ」 『響也さんは、とてもお優しい方です。ただ……』  ただ、私を愛してはくれなかった、と。 (確かに。僕を心から愛してくださるとは、限らない)  そうなれば。  子どもを授からなかったら、一年でお別れなのだ。  麻衣は、そのことを忘れてはいなかった。 「一年と言わず。嫌になったら、明日にでも帰って来なさい。いいね!?」 「お父様、ったら。心配性ですね」  僕は平気です、と麻衣は笑顔で父と別れた。  とにもかくにも、これで早乙女家は目前の危機からは脱出できるのだ。  飛鳥家の後ろ盾ができた今、事業もこれまでよりうまくいくだろう。 「後は、僕のところにコウノトリが赤ちゃんを運んできてくれれば、良いんだけれど」  そんな思いを胸に、麻衣は飛鳥家の屋敷へ向かった。

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