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第九章 麻衣に会いに、猫を探しに。

 響也邸では、出始めから思いもかけない洗礼を受けてしまった、麻衣だ。  なにせ、自分を待ってくれているはずの響也が、いない。  麻衣は、落ち着かない時間を過ごしていた。  だが、下を向いてばかりいても、仕方がない。  麻衣は気分を上げるために、天井を仰ぎ見た。  しばらくそうして首を戻すと、まるでコレクションボードのように洋酒のボトルが並んだ、おしゃれなチェストがある。  そしてその上に、なぜか猫が座っていた。 「わぁ、きれいな猫ちゃん!」  麻衣はその猫に、ここにやって来て初めての潤いを感じた。  灰色の短毛で包まれた猫は、音もなく飛び降りて、麻衣の方へ近づいてくる。 「可愛いな。触らせて、くれるかな?」  下に差し出した麻衣の手のひらを、猫は少し嗅いだ。  そして、額を擦り付けてきてくれたのだ。 「ありがとう。僕は、早乙女 麻衣。よろしくね」 「ニャァ」  良かった。  このネコちゃんは、何の思惑もなく。  心から、僕を歓迎してくれたんだ。  麻衣は猫を抱くと、ソファに寝転んだ。 「響也さん……、早く会いたいな……」  小さな猫の温もりと共に、眠ってしまった。

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