41 / 230

第九章・2

「ぅん……」  目を覚ました麻衣は、しばらく自分の置かれた場所が解らなかった。  次第に頭がはっきりしてくると、ここは住み慣れた早乙女邸ではないことに、気づいた。 「僕、眠っちゃったんだ」  ここは、響也さんのお屋敷。  そして、僕に与えてくださった部屋。  その、ソファの上。  体を起こすと、温かい毛布が掛けてある。 「きっと、岩倉さんが用意してくれたんだ」  彼の姿は無いが、ソファ近くのテーブルに書置きがあった。 『お疲れでしょうから、充分お休みください。御用があられましたら、お呼びください』  手紙の傍に、手のひらサイズの端末が置いてある。  画面にはいくつかのアプリマークがあり、その中にベルの絵のものが光っていた。  おそらく、これがコール。  ここをタップすれば、岩倉が来てくれるはずだ。

ともだちにシェアしよう!