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第九章・4

 麻衣はうなだれて、手にした機械をテーブルの上へ置いた。  岩倉の話では、響也はこの後にバスタイム、夕食、執務、そして……。 「本家の、お父様にお会いするんだって」  毛布の下で、ぬくぬくと眠る猫に、麻衣はつぶやいた。  おそらく、海外出張の報告と成果について、遅くまで面談をなさる。  そう、執事は語った。 「ちょっぴりでいいから。お顔だけでも、見たかったな」  眠る猫の柔らかな毛皮を撫でていると、岩倉が迎えに来てくれた。  夕食の準備が、整ったのだ。  彼に連れられ、麻衣はリビングを後にした。  猫が少しだけ気になったが、よく眠っているので、そのままにしておいた。 (眠る前に、もう一度様子を見に来よう)  もし、いなくなっていたら。 (寂しいだろうな)  猫しか寄る辺のない、今の麻衣だった。

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