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第九章・6
「麻衣に、会いたいな。今後の予定は、どうなってる?」
「響也さまは、お夕食の後に、執務、本家の旦那様との面談が」
「よし、夕食をカットしよう。その時間を、麻衣との面談に当てる」
目に見えて心を弾ませ始めた響也に、服部は恐る恐る切り出した。
今なら、彼の怒りが和らぐかもしれないからだ。
「響也さま。実は、愛猫の翡翠(ひすい)の姿が、午後から見えません……」
「何!?」
「た、ただいま、総出で捜索活動をいたしております」
一瞬で顔つきの変わった響也に、服部は身をすくませた。
響也は、麻衣の知らせがなければ、手にしたグラスを床に叩きつけていたところだ。
「待て。翡翠には、GPS機能のある首輪をつけている」
響也は端末を操作すると、猫の居所を探した。
「ん? この屋敷の3階、だと?」
「そこは今、麻衣さまのお住まいです」
よし、と響也はグラスをテーブルに置いた。
「今から、3階に降りる。麻衣との面談と、翡翠の捜索だ」
まるで、少年がカブトムシを探しに行くような高揚感を胸に、響也は3階へと向かった。
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