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第十章 ようやくの再会
夕食後、麻衣は急いでリビングへと走っていた。
眠る前に少しだけ、とは思っていたが、あの猫が気になって仕方がないのだ。
「まだ、いてくれるかな。ミドリちゃん」
猫が持っていた、神秘的なグリーンの瞳が印象的だったため、麻衣は彼女に『ミドリ』と名前を付けていた。
ミドリは、いた。
ソファの上で、毛布をかぶって。
麻衣が離れた時のままの姿で、眠っていた。
「ああ、良かった」
驚かせないようにと、静かにソファに掛ける。
ミドリの耳がぴくんと動き、その片目だけが細く開かれた。
「ごめん。起こしちゃった?」
「ニャァ」
ミドリは起きて、大きく伸びをした。
麻衣に対する警戒心は無く、すぐに体を摺り寄せて来た。
「ふふっ。可愛い」
よしよし、と喉をくすぐると、ゴロゴロと甘えた音を鳴らす。
すっかりくつろいでいた麻衣だが、不意にドアがノックされた。
「岩倉さんかな?」
どうぞ、と返事をすると、入って来たのは何と響也だった。
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