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第十章・2
「き……!」
響也さん、と呼びたかったのに、声が出ない。
代わりに、様々な思いが麻衣の心に渦巻いた。
会いたかったです。
ようやく、会えましたね。
僕、嬉しいです。
とても。
とても、とても、とっても……!
「麻衣。よく来てくれた」
「響也さん!」
感動の再会で、抱き合いたいところだったが、二人の間には可愛い邪魔者がいた。
「ニャァ」
やけにのんびりと動き、麻衣の膝の上に座り込んでしまった、邪魔者。
「翡翠。ここにいたのか」
「え? このネコちゃん、響也さんの猫なんですか?」
「いや、それは確かに、そうなんだが」
響也はそこで言葉を切って、麻衣の隣に掛けた。
彼の膝に落ち着いている柔らかな生き物を、撫でる。
撫でながら、顔は麻衣の方に向けて、語った。
「翡翠は、私以外の人間には、決して懐かなかった猫なんだが」
「僕とは、仲良くしてくれました」
それが不思議だ、と響也は微笑んだ。
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