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第十二章・2

「響也さん!」 「響也、どうしてここに?」  お前は今の時間、飯を食ってるはずだ、と哲郎は細めていた目を円くした。 「昼食の時間は、カットした。麻衣のことが、気になってな」  その言葉に、哲郎はシニカルな笑みを浮かべた。 「ほう。今はまだ、麻衣くんのことが気になると見える」 「今はまだ、とは? 私は麻衣と婚約したんだ。滅多なことを言うと、許さんぞ」  火花を散らす勢いの二人の間に、麻衣は慌てて割って入った。 「ケンカは止してください。先生は、響也さんのお友達なんですか?」  麻衣は、哲郎が響也のことを『響也さま』ではなく『響也』と呼び捨てたことに気付いていた。  医師とは言え、かなり親しい間柄でないと、許されない行為だ。  麻衣の問いかけには、響也が応えた。 「彼は、腐れ縁の友人だ。性格は悪いが、腕だけは確かなので、麻衣のために屋敷へ呼んだんだ」 「僕のために」  確かに、女性を診る産科医よりも、オメガ男性専門の医師の方が頼りになる。  響也の気遣いに、麻衣は嬉しくなった。

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