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第十二章・4

「黙って聞いていれば、勝手なことをべらべらと。私だって、きちんと体の管理はしている!」 「ほう。言ってみろ」 「精液検査をし、精子の状態を良好に保つようにしている。私の精子は数が多いし、活発だし、損傷もない!」 「うん、解った。じゃあ、他には?」 「えっ?」  やれやれ、と哲郎は肩をすくめて麻衣の方を向いた。 「な? 恋人失格だろう?」 「そうですね……」  麻衣も、呆れて溜息をついている。  響也は、慌てた。 「麻衣までも。何だなんだ、一体私の、どこがいけない!?」 「精子の管理だけして、女性の排卵日に併せてだけ、会いに来る」  お前は、そういうやつだ。  哲郎は、麻衣に顔を近づけ小声で言った。 「こいつはね。初等科の頃から、欲しいものは必ず手に入れる男だった」 「はい」 「だけど。手に入れてしまった後は、次第に興味を失くす」  響也は、哲郎の襟首を後ろから掴んで、麻衣から引きはがした。 「私には、仕事がある。婚約者にばかり時間を割いては、いられないんだ!」

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