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第十三章 君が欲しい
秋の美しい庭園を、響也と麻衣は並んで歩いた。
風が吹くと、はらりと落ちる紅葉。
麻衣はそれを受け止めようと、はしゃいだ。
「見てください、響也さん。僕、地面に落ちる前の葉を、捕まえました!」
そして、その枯れた葉を、大切にポケットにしまう。
そんな麻衣の行動を、響也は不思議に感じた。
「麻衣。栞にするなら、もっと美しい葉を取ってあげるよ?」
手近な枝に腕を伸ばす彼を、麻衣は止めた。
「いいんです、これで。たとえ枯れていても、僕には美しいんです」
役目を終え、地に落ちる枯れ葉。
だが今度は土に還り、生まれた木の養分になる。
麻衣はそこに、命の循環を見ていた。
尊い、自然の姿だった。
「麻衣はやはり、素敵な子だね」
響也は、麻衣の小さく薄い手を握った。
「池の方へ行こう。野点の準備を、させてある」
「はい」
寄り添い、手を繋いで、二人は静かに歩いた。
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