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第十三章・3

 茶道の女性は、驚いていた。 (響也さまが、こんなに穏やかに笑っておいでだなんて)  大勢の客人を招いての茶会を、頻繁に開く響也だ。  もちろんゲストには、いい顔をして愛想よく振舞う。  しかしそれは、麻衣がパーティーで見抜いたような、営業スマイルだった。  このように、素で心から微笑む響也を、女性は初めて見たのだ。  女性の視線に気づかないのか、響也はポケットから端末を取り出し、執事の服部につないだ。 『お呼びでしょうか、響也さま』 「服部。あと一時間、麻衣と共に過ごす」 『し、執務はどうなさるので!?』 「夜に挽回するさ。では、よろしく」  服部は何か叫んでいたが、響也は通話を切った。 「さあ、麻衣。菊を愛でに行こう」 「はい!」  野点の礼を述べ、響也は麻衣と共にゆっくりと去って行く。  その後ろ姿に、女性は麻衣の持つ魅力を感じ取っていた。 「あの新しい婚約者さまは、響也さまを変えてくださるかもしれない」  二人の間に子どもが授かることを、願わずにはいられない女性だった。

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