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第十四章・3

 哲郎との通話を切った麻衣だが、彼が最後に語った言葉が気になった。 『ああ見えて、響也はまだまだ未熟で幼いんだ。よろしく頼む』  子どもの頃からの付き合いがある哲郎だからこその、意見なのだろう。 「響也さんのことを、もっと深く知る手掛かりになるかもしれない」  麻衣は哲郎の言葉を、大切に胸にしまった。  この後のスケジュールは、夕食に、お風呂に、音楽鑑賞、ストレッチ。  そして、就寝。  だが、寝入ってしまう前に、響也との夜伽が待っている。 「パーティーの夜は、途中で終わってしまったけれど」  今度こそ、響也の愛を最後まで受け止める覚悟の、麻衣だ。  少し、緊張している。 「でも、どうしてだろう。怖くはない」  響也と共に過ごした一番新しい記憶は、庭園で小菊を愛でたことだ。  飾り気のない、優しい言葉。  穏やかな、笑顔。  それらを思うと、心が温かくなる。  恐怖など、消えていく。  麻衣は、落ち着いて響也との夜を迎えることができた。

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